2003年12月31日水曜日

第三十六回 今年('03)最後のラッパ

愛娘のジョイが聖愛幼稚園(保育園)に通うようになってから、彼女のお弁当を毎朝作る事が、新たにぼくの日課に加わった。

2歳の子供のお弁当だなんて高を括っていると、とんでもないことになる。朝、時間の無いことを理由に、冷凍食品や缶詰などでお茶を濁そうものなら、迎えに行って、家路に向かう車の中でたちまちブーイングが始まる。

時間のたっぷりとある若い駐在員のお母さんは、趣向を凝らしたファンシー且つ、かわいらしいお弁当を作られる。ミッキーマウスの顔を模ったピラフや、蛸の形に似せたソーセージなど、目で楽しんで味わうことが出来る。

ぼくの作るお弁当は、もっぱら味で勝負だ。と言いながらも、忙しさにかまけて、つい手を抜いてしまう。

それにしても、幼児の味覚感覚とやらは、思っていた以上に鋭い。銀鮭よりも紅鮭を好み、ブロイラーよりも地鶏を好み、リトル東京で購入した和菓子よりも、日本からの土産に頂いた「とらや」の羊羹(ようかん)に目がない。

おまけに羊羹を摘みながら味わう玉露を、舌の上でころころさせながら飲む所作は、まるでご隠居さんのようである。

だが、やっぱり女の子である。ピザを食べさせたらすっかり気に入ってしまった。以来、今晩何が食べたいと尋ねると、来る日も来る日も、ピザ、ピザ、ピザの連続である。ぼくは夕餉にピザやハンバーガーのたぐいだけは勘弁して頂きたい。

ところで、この稿が今年最後の『ラッパ』になる。本年は未年だったので表題通り『ラッパ』の年であった。先日、日本へ電話をかけたら、姪の愛子がまもなく出産すると言う。年内に産まれたら未年だ。俗に男の未は優しくて、女の未は門にも立たせるなと言われている。

未年の女性は、要するにしっかり者の女性が多いということだ。ぼくの知り合いで今年還暦を迎えられた夫人などは、たぐいまれな気魄の持ち主で、やることなすことが半端ではない。

この夫人の性格は何事においても没頭すると猪突猛進になり、曲がったことが大嫌いで正義感に溢れている。聞く話によると、知り合いの遺産相続問題に首を突っ込み、不条理な条件を企てる敏腕弁護士を向こうに回して、どのような手続きを覆んだのかは謎であるが、裁判所からの是認を取得した上で、証拠固めのために銀行へ乗り込んでいって、貸し金庫を電気ドリルで開けてしまった。

話はがらりと変わるが、来年の八月に音楽劇を上演することになった。会場は未定であるが、ダウンタウン、サウスベイ、そしてオレンジ郡の三箇所を予定している。

出し物は鈴木咲子さん原作の『撫子』(なでしこ)。内容は原爆投下前に、疎開先の二人のわが子に当てて綴られた手紙の数々を通して、現代に生きる人々の心にも肉薄する、限りない家族愛に焦点をあてている。

趣意は悲惨な戦争と原水爆禁止、そして平和の尊厳を訴えるだけではない。感情豊かなピアノの伴奏に合わせて、往時の書簡を情愛深く謳いあげることによって、現代の家族に欠落している言葉の伝え方や思い遣りについて、一石を投じるものである。

入場は有料だが、敬老シニア・ヘルスケア募金のためのチャリティー公演となる。これから共催、後援、協賛者を募り、春には若干名の出演者を公募してオーデションを行う。

演出は広島オペラスタジオの演出家、梶田明子さんが担当、ぼくは脚色のお手伝いをさせて頂くことになった。この音楽劇に賛同し、何らかの形で参加をご希望される方は、ホームページの『ラッパを吹くひつじBBSフォーラム』などを利用してご連絡してください。

さて、今年も残りあと僅かとなった。年末には家族で温泉へ行く予定にしている。只今、片道二時間以内で行ける南カリフォルニアのホット・スプリングを物色中。アイスボックスに食料とワインを詰めて、ささやかではあるが、森林浴を満喫しながら今年一年の疲れを癒したい。

では、来年も引き続き『ラッパを吹くひつじ』をよろしくお願い致します。

読者の皆様に心を込めて、ハレルヤ!

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